◇ ケトン食の効果を高める薬剤・サプリメント

中鎖脂肪ケトン食の抗腫瘍効果を高める薬剤やサプリメントの作用と根拠について解説しています。

○ 2−デオキシ-D-グルコース

2-デオキシ-D-グルコース(2-Deoxy-D-glucose)は、グルコース(ブドウ糖)の2位の水酸基(OH)が水素原子(H)に置換された物質(グルコース誘導体)です。2-デオキシグルコース(2-DG)はグルコースと同じようにグルコース輸送体(グルコース・トランスポーター)のGLUT1を利用して細胞内に取り込まれ、ヘキソキナーゼで2-DG-6リン酸に変換され ます。
2-DG-6-リン酸は、解糖系酵素で代謝できないため、細胞内に蓄積します。細胞内で蓄積した2-DG-6-リン酸はヘキソキナーゼとヘキソース・フォスフェート・イソメラーゼを阻害します(拮抗阻害)。
その結果、2-DGを経口摂取すると、がん細胞に多く取り込まれ、がん細胞の解糖系を阻害するので、グルコースの代謝によるエネルギー産生と物質合成を阻害することになります。
がん細胞で亢進した解糖系を阻害するので、中鎖脂肪ケトン食の抗腫瘍を高めます。
(詳しくはこちらへ:)

○ メトホルミン

メトホルミン(metformin)は、世界中で1億人以上の2型糖尿病患者に使われているビグアナイド系経口血糖降下剤です。糖尿病だけでなくがんの予防や治療の分野でも注目されており、がんの発生を予防する効果やがん細胞の抗がん剤感受性を高める効果が報告されています。
ATP産生を阻害する効果や、がん細胞の増殖を抑える様々な効果を有するAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化する効果や、インスリンの分泌を低下させる作用など、多彩な抗腫瘍効果を持ちます。
肝臓における糖新生を阻害する作用もあり、ケトン食の抗腫瘍効果を高めます。
(詳しくはこちらへ:)

○ ラパマイシン

ラパマイシン(Rapamycin)は臓器移植の際の拒絶反応を防ぐために使用される薬ですが、このラパマイシンに寿命延長効果と抗がん作用が明らかになったことから、ラパマイシンの生体内のターゲット分子である哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mammalian target of rapamycin)、略してmTOR(エムトール)という蛋白質が注目されています。
ラパマイシンはmTOR複合体1(mTORC1)を阻害することによってがん細胞の増殖を抑制します。mTORC1の活性を阻害するとケトン食の抗腫瘍効果を高めます。
(詳しくはこちらへ:)

○ ジクロロ酢酸ナトリウム

ジクロロ酢酸ナトリウムはピルビン酸脱水素酵素キナーゼを阻害することによってピルビン酸脱水素酵素の活性を高める作用があります。 ミトコンドリアの異常による代謝性疾患、乳酸アシドーシス、心臓や脳の虚血性疾患の治療などに、医薬品として古くから使用されています。
がん細胞のミロコンドリアの活性を高めることによって酸化ストレスを高め、アポトーシスを起こしやすくする作用があります。
(詳しくはこちらへ:)

○ ヒドロキシクエン酸

がん細胞では脂肪酸の新規合成が盛んです。脂肪酸合成酵素(fatty acid synthase: FASN)をはじめ、幾つかの脂質代謝酵素ががんの発生や悪性化を促進することが知られており、これらががん治療の新たな標的分子となる可能性が期待されています。
ガルシニア・カンボジアの果皮に多量に含まれるヒドロキシクエン酸ATPクエン酸リアーゼの酵素活性を競合阻害することによって、脂肪合成を阻害する作用があります。がん治療にヒドロキシクエン酸が有効であった臨床例の報告があります。
(詳しくはこちらへ:)

○ R体アルファリポ酸

アルファリポ酸(αlipoic acid、別名:チオクト酸)は、多数の酵素の補助因子として欠かせない体内成分です。特に、クエン酸回路のピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体の補助因子として、ミトコンドリアでのエネルギー産生に重要な役割を果たしています。αリポ酸にはR体とS体という2種類の光学異性体(鏡像異性体)が存在しますが、抗がん作用があるのはR体の方です。ジクロロ酢酸ナトリウムやヒドロキシクエン酸の抗腫瘍効果を高めます。
(詳しくはこちらへ:)

○ シメチジン

ヒスタミンH2受容体拮抗薬のシメチジンは胃酸分泌を抑制する薬として胃炎や胃潰瘍の治療に用いられています。シメチジンにはがん細胞の増殖を抑える作用、アポトーシスを誘導する作用、血管新生を阻害する作用、がん細胞に対する免疫応答を増強する作用など様々な抗腫瘍効果が報告されています。
(詳しくはこちらへ:)

○ メベンダゾール

がん治療以外の目的で開発された何千種類という既存の薬から、抗がん作用を有する物質が探索され、駆虫薬として広く使用されているメベンダゾールという薬が強い抗がん作用を持つことが明らかになっています。この薬は副作用が極めて少なく、安全性が確立されており、臨床例での有効性も報告されています。

○ メトロノミック・ケモテラピー

メトロノミックとは、リズムを刻む「メトロノームの様な」という意味で、メトロノミック・ケモテラピーとは、メトロノームのように規則的に低用量の抗がん剤を頻回に投与していく抗がん剤治療法です。最大耐用量を投与する標準的な抗がん剤治療に代わって、最近注目を集めている治療法です。