◇ 代謝をターゲットにしたがん治療

がん細胞における代謝異常の特徴を利用した治療法について解説しています。

○ 代謝をターゲットにしたがん治療

がん細胞の代謝の特徴と、それをターゲットにしたがん治療法について紹介します。 がん細胞のワールブルグ効果を是正するとがん細胞は自滅させることができます。
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○ 2-デオキシ-D-グルコースの抗がん作用

2-デオキシ-D-グルコース(2-DG)はグルコース(ブドウ糖)の2位の水酸基(OH)が水素原子(H)に置き換わったグルコース類縁物質です。グルコースと同様にグルコース・トランスポーターのGLUT1によってがん細胞に取込まれますが、ヘキソキナーゼでリン酸化された2-DG-6-リン酸の段階で代謝がストップしてがん細胞内で蓄積し、ヘキソキナーゼをフィードバック阻害します。その結果、がん細胞の解糖系を阻害して、がん細胞の増殖を抑制し、死滅させる作用を発揮します。
抗がん剤や放射線治療と併用して抗腫瘍効果を高めると同時に副作用を軽減する効果が報告されています。
メトホルミンとの併用で抗腫瘍効果を高める作用が報告されています。ケトン食と2-DGを併用すると相乗的に抗がん作用を増強します。
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○ AMPK,mTORC1,FOXO3Aをターゲットにしたがん治療

AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)と哺乳類ラパマイシン標的タンパク質複合体-1(mTORC1)と転写因子のFOXO3Aなどをターゲットにしたがん治療法はケトン食との相乗効果によって抗腫瘍作用が増強します。
ケトン食+メトホルミン+フェノフィブラート+イソトレチノインなどを併用するとがん細胞を効率的に死滅できます。
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○ 寿命を延ばすがん治療:2-デオキシ-D-グルコース+メトホルミン+ラパマイシン+ケトン食

寿命延長と抗がん作用に共通する解糖系とmTORC1をターゲットにしたがん治療法です。
インスリン/IGF-1シグナル伝達系で活性化されるPI3K/Ak/mTORC1シグナル伝達系を抑制し、AMPKやFOXOの活性化は、がん細胞の発生や増殖を抑制する作用があり、しかも老化を抑制し寿命を延ばす作用があります。したがって、これらをターゲットにしたがん治療は副作用のない理想的ながん治療法なり得ると言えます。

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○ がん細胞におけるエネルギー産生の特徴を利用したがん治療

がん細胞の特徴である嫌気性解糖の亢進やミトコンドリア機能の低下を利用した治療法です。がん細胞に選択的にエネルギー産生を枯渇させ、酸化ストレスを増大させ、がん細胞を死滅させます。抗がん剤感受性を高めるので、抗がん剤治療との併用で抗腫瘍作用を増強します
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○ ジクロロ酢酸ナトリウムの抗がん作用

がん細胞はピルビン酸脱水素酵素キナーゼの活性亢進によってピルビン酸脱水素酵素の活性が抑制されています。その結果、ミトコンドリアでのTCA回路と酸化的リン酸化によるエネルギー産生が抑制されています。ピルビン酸脱水素酵素キナーゼの阻害剤であるジクロロ酢酸ナトリウムは、がん細胞のミトコンドリアの機能を活性化して、活性酸素の産生を高めて、がん細胞を死滅させる作用があります。
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○ AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化を目標としたがん治療

AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化すると、副作用無くがん細胞の増殖を抑えることができます。
糖尿病やメタボリック症候群でがんのリスクが高くなる理由の一つがインスリン抵抗性です。インスリンの効き目が悪くなって、高インスリン血症になることががんの発生や再発を促進します。 AMPKはインスリン抵抗性を改善してがんの発生を予防します。抗がん剤の治療効果を高める効果もあります。
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○ Targeting Cancer Cell Metabolism: Nature Video

Natureの姉妹誌のNature Reviews Drug Discoveryによって作成されたビデオ・アニメーションです。がん細胞の代謝の特徴を利用したがん治療の可能性について解説しています。
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