◇ 中鎖脂肪酸中性脂肪とは

中鎖脂肪酸中性脂肪(中鎖脂肪酸トリグリセリド;中鎖脂肪)について解説しています

【食事中の脂肪はリパーゼによって分解されて吸収される】

脂肪グリセロール(グリセリンともいう)1分子に3分子の脂肪酸が結合した構造をしています。
食事から摂取した脂肪は十二指腸や小腸内で膵液中のリパーゼによって加水分解され、トリグリセリド(中性脂肪)から脂肪酸とグリセロールが分離されます。グリセロールは水溶性なのでそのまま小腸から毛細血管に吸収され、解糖系で代謝されたり、糖新生によってブドウ糖に変換されます。
脂肪酸は水に不溶性ですが、胆嚢から十二指腸に分泌される胆汁中に含まれる胆汁酸やホスファチジルコリンやコレステロールによって乳化されたミセルを形成します。ミセルというのは、水になじむ部分(親水基)と油になじむ部分(親油基)をもつ物質が、水の中で親水基を外に親油基を内に向けて球状に会合した粒子です。ミセルは水溶性で受動拡散によって消化管粘膜の吸収上皮細胞内に吸収されます。
脂肪酸が腸管から吸収されるとき、脂肪酸の大きさ(炭素鎖の長さ)の違いによって代謝のされかたが異なります。
炭素数が13以上の長鎖脂肪酸の場合は、腸壁を通り抜けると、腸管粘膜上皮細胞内で再びグリセロールと結合して中性脂肪(トリグリセリド)になり蛋白質などと一緒になってカイロミクロンというリポ蛋白質粒子になります。
カイロミクロンはリンパ管から胸管に入り、鎖骨下静脈から大循環系に入って全身に運ばれます。主に脂肪組織や筋肉組織に取込まれ、一旦貯蔵されてからグリコーゲンが枯渇したときに分解されて、ゆっくりと消費されます。つまり、長鎖脂肪酸はエネルギーとして代謝されにくく、体脂肪として蓄積されやすい脂肪酸です。

脂肪の吸収と代謝

食事から摂取した脂肪は十二指腸や小腸内で膵液中のリパーゼによって加水分解され、トリグリセリド(中性脂肪)から脂肪酸とグリセロールが分離される。グリセロールは水溶性なのでそのまま小腸から毛細血管に吸収される。
長鎖脂肪酸はカイロミクロンというリポ蛋白質粒子となってリンパ管から大循環系に入り、主に脂肪組織や筋肉組織に取込まれ、一旦貯蔵されてからグリコーゲンが枯渇したときに分解されて、ゆっくりと消費される。
中鎖脂肪酸はカイロミクロンを作らずに遊離脂肪酸のまま門脈に入って肝臓へ運ばれ、速やかにエネルギー源となって代謝される。糖質摂取が少ない条件では、中鎖脂肪酸は肝臓でケトン体を大量に産生することができる。 ケトン体はがん細胞の増殖を抑える作用がある。

 

中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸の代謝の違い
脂肪酸は水に不溶性で、胆嚢から十二指腸に分泌される胆汁中に含まれる胆汁酸やホスファチジルコリンやコレステロールによって乳化されたミセルを形成する。ミセルというのは、水になじむ部分(親水基)と油になじむ部分(親油基)をもつ物質が、水の中で親水基を外に親油基を内に向けて球状に会合した粒子で、ミセルは水溶性で受動拡散によって消化管粘膜の吸収上皮細胞内に吸収される。
炭素数が13以上の長鎖脂肪酸の場合は、腸壁を通り抜けると、腸管粘膜上皮細胞内で再びグリセロールと結合して中性脂肪(トリグリセリド)になり蛋白質などと一緒になってカイロミクロンというリポ蛋白質粒子になる。カイロミクロンはリンパ管から胸管に入り、鎖骨下静脈から大循環系に入って全身に運ばれ、主に脂肪組織や筋肉組織に取込まれ、一旦貯蔵されてからグリコーゲンが枯渇したときに分解されて、ゆっくりと消費される。
炭素数が8~12の中鎖脂肪酸は胆汁酸によるミセル化は不要で、小腸吸収細胞に容易に吸収され、分子が小さいことから腸管で毛細血管に吸収され、長鎖脂肪酸のように中性脂肪に再合成されず、カイロミクロンを作らずに遊離脂肪酸のまま門脈に入って肝臓へ運ばれ、速やかにエネルギー源となって代謝される。

【中鎖脂肪酸は肝臓で速やかに代謝される】

炭素数が8~12の中鎖脂肪酸は胆汁酸によるミセル化は不要で、小腸吸収細胞に容易に吸収され、分子が小さいことから腸管で毛細血管に吸収され、長鎖脂肪酸のように中性脂肪に再合成されず、カイロミクロンを作らずに遊離脂肪酸のまま門脈に入って肝臓へ運ばれ、速やかにエネルギー源となって代謝されます。
中鎖脂肪酸は肝細胞内のミトコンドリアに入り、炭素分子が1つおきに酸化されるβ酸化という過程に入ってアセチルCoA を生じてTCA 回路に入って代謝されますが、ブドウ糖の補給が少ない状況ではアセチルCoAはケトン体産生に利用されます。
脂肪酸がβ酸化のためにミトコンドリアに取込まれるとき、長鎖脂肪酸はL-カルニチンが必要ですが、中鎖脂肪酸はL-カルニチンの助けなしにミトコンドリア内に入って、速やかに代謝されます。

脂肪酸の代謝

脂肪酸は肝細胞内のミトコンドリアに入り、炭素分子が1つおきに酸化されるβ酸化という過程に入ってアセチルCoA を生じてTCA 回路に入って代謝されるが、ブドウ糖の補給が少ない状況ではアセチルCoAはケトン体産生に利用される。  
脂肪酸がβ酸化のためにミトコンドリアに取込まれるとき、長鎖脂肪酸はL-カルニチンが必要であるが、中鎖脂肪酸はL-カルニチンの助けなしにミトコンドリア内に入って速やかに代謝される。

中鎖脂肪酸はエネルギーとして燃焼される効率が高く、体脂肪として蓄積しにくいので、最近では中鎖脂肪酸を含む脂肪(中鎖脂肪酸トリグリセリドあるいは中鎖中性脂肪)はダイエットや健康によい油として急速に普及しています。手術後や未熟児の栄養補給に医療現場でも利用されている健康的な脂肪です。中鎖脂肪酸の入った食用油は体脂肪をつきにくくする特定保健用食品の関与成分となっています。米国では、アルツハイマー病の治療にも利用されています。
中鎖脂肪酸は長鎖脂肪酸より約4倍も吸収が速く、代謝も10 倍も速いと言われています。このように中鎖脂肪酸のエネルギー利用速度は速いので、激しい運動の持続時間を延長する効果も報告されています。また、長鎖脂肪酸は感染防御や免疫系に負荷がかかりますが中鎖脂肪は影響が少なく、また組織への蓄積傾向や臓器障害のもととなる脂質過酸化反応も少ないためより安全に摂取できます。 
長鎖脂肪酸は糖類が存在するとケトン体産生が抑えられますが、中鎖脂肪酸からケトン体を作る経路は糖質の影響をほとんど受けずにケトン体が多量に産生されます。肝臓ですぐに分解される中鎖脂肪酸を利用すると、脂肪の割合を60%程度に減らし、糖質を1日40〜60g程度摂取しても、ケトン体を大量に産生することができます。
日本で使われている食用油(菜種油、大豆油、紅花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、コーン油など)は長鎖脂肪酸(炭素数が13以上)が主成分です。一方、中鎖脂肪酸(炭素数が8〜12)を多く含む油としてはヤシ油(ココナッツオイル)があります。ココナッツオイルには、60〜70%の中鎖脂肪酸トリグリセリド(中鎖脂肪)が含まれていますが、ケトン食療法用の中鎖脂肪酸トリグリセリド85〜100%のオイル(キッセイ薬品のマクトンオイルや日清オイリオ社のMCTオイルなど)も市販されています。中鎖脂肪酸が長鎖脂肪酸よりもケトン体を多く産生でき、炭水化物や蛋白質の許容量が高いので、より調理がしやすく食べやすいケトン食を作れます。このように、中鎖脂肪をうまく利用するのが、がん治療に対する中鎖脂肪ケトン食療法のポイントになります。

中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸の違い

【中鎖脂肪酸を多く摂取し、抗がん作用のある長鎖脂肪酸も利用する】

肝臓ですぐに分解される中鎖脂肪酸を利用すると、脂肪の割合を60%程度に減らし、糖質を1日40g程度摂取してもケトン体を大量に産生することができます。
中鎖脂肪を多く摂取して、脂肪:糖質+蛋白質の比率を1.5:1、つまり食事の60%を脂肪にするという食事を目標にします。糖質を40g、蛋白質を80g摂取するとカロリーは480キロカロリーになります。糖質+蛋白質の120gの1.5倍の脂肪は180gで、これは1620キロカロリーになります。全てを合わせて2100キロカロリーになります。カロリーは無理に減らす必要はありませんが、過剰に摂取することは意味がありません。必要最小限のカロリー摂取を目標にします。ケトン体の産生が少ないときはカロリーを減らすとケトン体が出やすくなります。
中鎖脂肪はココナッツオイルや精製した中鎖脂肪(マクトンオイルやMCTオイル)を1日60〜90g程度を摂取します。キッセイ薬品のマクトンオイル(MCT85%)や日清オイリオ社のMCTオイルは無味無臭で、いろんな食品に添加して利用できます。
(ネットで検索すると米国製の100%中鎖脂肪のMCT Oilが購入できます。日本製の製品よりかなり安価です)
中鎖脂肪の割合をもっと増やしても良いのですが、必須脂肪酸が欠乏しないように長鎖脂肪の摂取量は減らさないようにします。
中鎖脂肪を多く摂取すると下痢や腹痛など消化器症状が出やすくなります。不快な消化器症状が出ない範囲で少しづつ胃腸の状態を慣らしながら中鎖脂肪を増やしていきます。中鎖脂肪酸は手術後や未熟児の栄養補給にも利用され、長期に摂取して内臓脂肪の減少やメタボリック症候群の改善効果が認められている健康的な脂肪です。アルツハイマー病の予防効果も期待できます。
調理にはオリーブオイルを用い、ドレッシングにはフラックスシードシードオイル(亜麻仁油)紫蘇油(エゴマ油)を多めに使います。フラックスシードオイル(亜麻仁油)と紫蘇油(エゴマ油)はがん予防効果があるω3不飽和脂肪酸のαリノレン酸を多く含みます。魚の油に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)もω3不飽和脂肪酸で、がん細胞の増殖を抑える効果があります。ω3系不飽和脂肪酸を増やしてω3:ω6の比率を高めることでがんや肉腫が縮小したという報告もあります。
魚を食べる場合は、焼き魚は脂肪が減るので、刺身や煮付けがケトン食では適しています。オリーブオイルを多く使う地中海地方はがんが少ないことが知られています。動物実験ですが、フラックスシードオイルやクルミが腫瘍の血管新生を阻害する作用があることが報告されています。

【中鎖脂肪はがん性悪液質を改善し、腫瘍を縮小させる】

悪性度の高いがん細胞を移植したネズミの実験モデルを使って、中鎖脂肪と長鎖脂肪を投与した場合の腫瘍の増大やがん性悪液質(体重減少など)に対する効果を比較した研究が報告されています。それによると、中鎖脂肪を多く摂取すると、長鎖脂肪を摂取した場合と比べて、がん細胞の増大と体重減少が抑えられることが示されています。
がん性悪液質による体重減少を防ぐ方法としてインスリン注射も有効です。インスリンは蛋白質の同化を促進するので、筋肉組織の分解を抑制して体重の減少を防ぎます。しかし、インスリンはがん細胞の増殖を促進する作用があるので、実際にはがん性悪液質の治療には使えません。インスリンは体重減少を防ぐ効果があるが腫瘍の増大を促進するというわけです。
一方、中鎖脂肪酸は体重減少を防ぎ、腫瘍を縮小させます
中鎖脂肪を投与した場合、ケトン体が多く産生されるほど、がん細胞の増殖を阻止する効果が高いことが示されています。つまり、中鎖脂肪を多く摂取するケトン食療法は、がん細胞の増殖を抑え、体重減少などのがん性悪液質の改善にも効果を発揮します。
進行がんで体重減少があるとき、糖質の多い食事でカロリーを増やしてもがん性悪液質を増悪させるだけです。糖質はがん細胞のエネルギー源として優先的に使われ、しかもインスリンの分泌はがん細胞の増殖を刺激するからです。
一方、中鎖脂肪を多く摂取すると、がん細胞の増殖を抑え、体重を増やす効果が期待できます。インスリン分泌を増やさず、正常細胞のエネルギー源になり、がん細胞はケトン体を利用できないからです。